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見積が遅くて仕事を逃していた町工場が、AIに任せた3つの作業|もしもSpaceSaijoだったら #1

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目次
  1. この記事で分かること
  2. 1. 「見積、まだですか?」
  3. 2. 遅いのは「考える時間」ではなかった
  4. 3. やったこと:見積の下書きをAIに作らせる
  5. 4. 先に用意する3つの資料(ナレッジ)
  6. ① 単価表
  7. ② 過去の見積
  8. ③ 見積のルール
  9. 5. そのまま使えるプロンプト
  10. AIへの渡し方
  11. 6. 実際に出てきた見積の下書き
  12. 7. 試して分かった、AIに任せてはいけない所
  13. 8. 使う前に気をつけること
  14. 9. まずは、ここから始めてみてください
  15. よくある質問
  16. あなたの会社の場合は?

この記事について

登場する会社「SpaceSaijo」と人物は架空です。ただし、記事で紹介する仕組み(AIに渡す資料、プロンプト、出てきた見積の下書き)は、練習用のデータで実際に試したものです。そのまま、あなたの会社で試せます。

この記事で分かること

  • 見積に時間がかかる、本当の原因

  • 見積の下書きをAIに作らせるために、先に用意する3つの資料

  • そのまま使えるプロンプト(AIへの頼み方)の全文

  • 実際に出てきた見積の下書きと、AIに任せてはいけない所

1. 「見積、まだですか?」

SpaceSaijo は、従業員18名ほどの町工場です。宇宙関連の会社から図面を受け取り、ロケットのエンジンまわりの金属部品を、1個から数個ずつ削り出して作っています。

見積を作るのは、2代目の社長ひとり。

ロケットの部品は、見積が難しい仕事です。

  • チタンやニッケル合金のような特殊な材料を使い、単価がよく変わる

  • 寸法の精度が厳しく、加工にかかる時間が読みにくい

  • 材料の証明書や検査の記録など、書類の手間も見積に入れる必要がある

  • 1〜数個の少量生産なので、毎回「似た部品の前の見積」を探して参考にする

依頼が来るたびに、社長は棚のファイルをめくり、材料屋さんに単価を確かめ、電卓をたたいて、見積書に数字を打ち込みます。気づけば半日。

その間に、お客さんからは「見積、まだですか?」と電話がかかってきます。そして、何度か仕事をよその会社に取られてしまいました。

2. 遅いのは「考える時間」ではなかった

社長は「見積は頭を使う仕事だから、時間がかかって当たり前だ」と思っていました。

ところが、見積を作る半日の中身を分けてみると、次のようになっていました。

  • 探す:似た部品の、過去の見積を探す → 社長でなくてもできる

  • 調べる:材料の今の単価、検査や書類の費用を調べる → 社長でなくてもできる

  • 打ち直す:過去の見積や単価表の数字を、新しい見積書に打ち直して計算する → 社長でなくてもできる

  • 考える:穴が増えた・形が難しいなど、加工の手間を見積もる → 社長にしかできない

半日のうち、社長にしかできない「考える」の部分は、ほんの一部でした。残りの 探す・調べる・打ち直す は、決まった資料から決まった手順で答えが出る作業です。

そして、この「決まった資料から、決まった手順で答えを出す」作業こそ、AIがいちばん得意なことです。

3. やったこと:見積の下書きをAIに作らせる

仕組みはシンプルです。

  1. お客さんからの依頼(メールやメモ)を、AIに貼り付ける

  2. AIが、先に渡しておいた 会社の資料(ナレッジ) と 頼み方(プロンプト) に沿って、見積の下書きを作る

  3. 下書きには、明細・合計・似た過去の見積・「要確認」の一覧が並ぶ

  4. 社長は「要確認」と加工の判断だけを確かめて、お客さんへ送る

ポイントは、AIに「見積を作って」とだけ頼まないことです。それだけだと、AIはもっともらしい数字を勝手に作ってしまいます。会社の資料を先に渡し、ルールを決めておく ことで、毎回同じやり方の下書きが出てくるようになります。

4. 先に用意する3つの資料(ナレッジ)

AIに先に渡しておく資料を「ナレッジ」と呼びます。言ってみれば、AIのためのカンペです。新しく作る必要はなく、社長の頭の中やファイルにあるものを、表や箇条書きにまとめるだけです。

① 単価表

材料・加工・検査と書類の3つに分けて、単価を1か所にまとめます。更新日 も必ず書いておきます(古い単価で見積を出さないため)。

  • チタン合金 Ti-6Al-4V 単価 9,000円/kg、比重 4.43、手配の日数 4週間、更新日 2026-09-01

  • ステンレス SUS316L 単価 1,400円/kg、比重 8.00、手配の日数 2週間、更新日 2026-09-01

  • CNC旋盤 単価 7,000円/時間

  • 5軸マシニング 単価 15,000円/時間

  • 段取り 単価 6,000円/回

  • 三次元測定 単価 12,000円/個

  • 材料証明書(ミルシート)の手配 単価 5,000円/件

  • 初品検査報告書 単価 30,000円/件

※ここに載せている金額は練習用の架空の数字です。

② 過去の見積

過去の見積を、1件1行の一覧にします。図面の要点(材料・寸法・数量)、加工にかかった時間、付けた書類、金額を並べます。AIは、この一覧から「今回の依頼にいちばん近い見積」を探します。

  • Q-2026-007 品名 ノズル取付リング(穴12か所)、材料 Ti-6Al-4V、寸法 φ150×25、数量 2、加工時間(1個) 旋盤1.5h + 5軸1.0h、見積金額 231,800円

③ 見積のルール

社長が頭の中でやっている計算の決まりを、文章にします。ここが いちばん大事 です。

  • 材料の重さは、仕上がり寸法に直径+5mm・厚さ+5mmを足して計算する

  • チタンは加工時間を1.5倍、ニッケル合金は2.0倍にする

  • 合計に1.2をかけて見積金額にする(管理費と利益)

  • 100円未満は切り上げ。有効期限は30日

  • 単価表の更新日が180日より前なら「単価が古い」として要確認にする

  • 納期が「材料の手配の日数+2週間」より短ければ要確認にする

ルールがあいまいだと、AIの計算はずれます。「何mm足すか」「何倍にするか」まで書いておくのがコツです。

5. そのまま使えるプロンプト

ナレッジの3つを渡したうえで、次の頼み方を使います。最後の「依頼」の所に、お客さんからのメールやメモを貼るだけです。

あなたは、ロケット部品を作る町工場の見積担当です。 ナレッジの単価表・過去の見積・見積のルールを使って、下の依頼の見積の下書きを作ってください。 # ルール - 単価は、ナレッジの単価表の値だけを使う。表にない材料や加工は「要確認」と書く - 材料費・加工費・検査と書類の費用を分けて書く - 加工の難しさ(精度・形)の判断が必要な所は、金額を入れずに「社長の判断が必要」と書く - 似た過去の見積があれば、その番号と違う点を書く - 依頼に足りない情報(数量・材質・納期など)は「お客様への確認事項」にまとめる - 計算の途中(数量 × 単価)も明細に書く # 出力の形 1. 見積の明細(表:品名 / 数量 / 単価 / 金額 / 根拠) 2. 合計(税抜・税込) 3. 似た過去の見積と、違う点 4. 要確認の一覧 5. お客様への確認事項 # 依頼 (ここに依頼のメールやメモを貼る)

あなたの会社で使うときは、1行目の「ロケット部品を作る町工場」を自分の会社に置きかえてください。

AIへの渡し方

毎回資料を貼り付けるのは大変なので、資料とプロンプトを AIの中に保存しておける機能 を使います。

  • ChatGPT や Claude の「プロジェクト」:資料のファイルと指示を保存しておける

  • Gemini の「Gem」:同じように、資料と指示を保存した自分専用のAIを作れる

一度作っておけば、次からは依頼のメールを貼って送るだけです。各サービスの画面や名前は変わることがあるので、使うときの画面で確かめてください。

6. 実際に出てきた見積の下書き

練習用のデータで、次の依頼を入れてみました。

ノズル取付リングの改良版。チタン合金、φ160×25、穴16か所(前回は12か所)、精度±0.02mm、3個。ミルシート・検査成績書・初品検査報告書が必要。納期は6週間後。

出てきた下書きの一部です。

  • 材料費 チタン 数量 3個、金額 76,728円、根拠 素材 φ165×30 → 2.842kg × 9,000円/kg

  • CNC旋盤 数量 3個、金額 31,500円、根拠 1.5h × 7,000円(Q-2026-007 の実績)

  • 5軸マシニング 数量 3個、金額 45,000円、根拠 仮 1.0h(穴の追加分は含まない)

  • 段取り 数量 2回、金額 12,000円

  • 三次元測定・浸透探傷 数量 3個、金額 60,000円

  • 書類3点 数量 1式、金額 45,000円

  • 見積金額:324,300円(税抜)/ 356,730円(税込)

  • いちばん近い過去の見積:Q-2026-007(直径が φ150 → φ160、穴が12 → 16か所、数量が2 → 3個に変わった)

そして、AIは次の所を 「要確認」 として返してきました。

  • 5軸の加工時間 穴が12→16か所に増えた分の時間が、過去の見積にない。社長の判断が必要

  • 旋盤の加工時間 直径が大きくなった分を、前回のままにしている。社長の判断が必要

  • 納期 チタンの手配4週間+加工・検査2週間で、余裕がない

さらに「お客様への確認事項」として、図面の版、表面処理の有無、分けて納めるかどうかも挙げてくれました。

社長がやることは、この「要確認」を見て、加工時間を決め、金額を確かめることだけです。

7. 試して分かった、AIに任せてはいけない所

一番の発見は、加工時間はAIには決められない ということでした。

穴が増えた、直径が変わった、という時の手間は、過去の見積には載っていません。だからAIは「前回のまま・社長の判断が必要」としか書けません。ここは、何十年も機械に向き合ってきた社長の経験の出番です。

逆に言えば、プロンプトに「判断が必要な所は金額を入れずに書く」と入れておくだけで、AIは勝手な数字を作らず、判断すべき所を教えてくれるようになります。

そのほかに分かったこと:

  • AIが速いのは、似た見積を見つける・単価を引く・重さと金額を計算する・明細をそろえる、の部分

  • 単価の更新日と納期をルールにしておくと、見落としやすい所を毎回チェックしてくれる

  • ルールの書き方があいまいだと、計算がずれる

8. 使う前に気をつけること

  • お客さんの図面や情報を、どのAIに入れてよいか を先に決めておく。社外秘の扱いが決まっている場合は、会社のルールに従う。入力した内容をAIの学習に使わない設定があるかも確かめる

  • 単価表は定期的に更新する。AIは渡された単価しか使えません

  • 最後は必ず人が確かめてから送る。AIが作るのは、あくまで下書きです

9. まずは、ここから始めてみてください

いきなりAIを入れなくても大丈夫です。最初の一歩は、

単価表を1か所にまとめること。

材料・加工・検査と書類の単価を、更新日つきで1枚の表にしてみてください。それだけで、見積の「調べる」時間は減ります。そして、その表がそのままAIのナレッジになります。

次に、過去の見積を10件ほど一覧にし、頭の中にある計算のルールを箇条書きにすれば、準備は完了です。

よくある質問

Q. 高いシステムを入れないといけませんか?

いいえ。この記事の仕組みは、ChatGPT や Claude、Gemini などの、すでにあるAIのサービスで試せます。まずは無料や月額の範囲で、1件の依頼を試してみてください。

Q. うちの見積はもっと複雑です。

複雑な所ほど「見積のルール」に書き出す価値があります。全部をAIに任せる必要はなく、「探す・調べる・打ち直す」だけを任せて、判断は人に残せば十分に効果があります。

Q. パソコンが苦手な社員でも使えますか?

一度プロジェクト(Gem)を作ってしまえば、使う人がやることは「依頼のメールを貼って送る」だけです。

あなたの会社の場合は?

「うちの見積だと、ナレッジに何を入れればいい?」「この仕組みを、うちの業務に合わせて作ってほしい」という方は、お気軽にご相談ください。業務の流れを一緒に整理するところから、お手伝いします。

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もしもSpaceSaijoだったら

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※この記事に登場する会社・人物は架空です。金額は練習用のデータによるもので、実際の相場とは関係ありません。

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